天才外科医と秀才外科医

今日は1日まったりと宅浪モードだった。先週末、寝ずに頑張った反動で、月曜、火曜はお勉強がはかどらず、今日も平均だ。いつもそうだが、ゴールが見えてくると、どうも手綱が緩んでしまう。武田信玄は「戦は5分の勝ちをもって上し、7分の勝ちをもって中とし、10を以って下とす。」と説いたが、僕の人生はいつも5分以下の勝利がいいところだろう。クラウゼビッツ的な政治の手段としての戦争ではそれが最善なのかもしれないが、外科医の仕事が5分の勝利であってはならない。そんな時にいつも思い出すのが、僕が研修した病院の外科科長が送別会のときにくれた訓話だ。その病院は福島県会津若松市にあり、食道癌の鶴丸先生や乳癌の霞先生など名だたる外科医を輩出したことでも有名な病院だ。当時の外科科長K嶋先生は灘高から東大理IIIに進んだ典型的な秀才で、手術も誰から見てもリーズナブルな綺麗な理詰めの手術をされる先生だ。そのK嶋先生から、僕に「M先生は努力家だし優秀だと思うけど、いつも最後の詰めが甘い」とお言葉を頂いた。確かにその通りなのだ。「本当に良く研修医を観察してるなぁ」と感心させられてしまい、返す言葉も無かった。その病院には、もう一人すごい先生がいた。K田先生という当時外科部長の先生で、根っからのエリートのK嶋先生とは対照的に、根っからの叩き上げの外科医だった。K田先生の手術は、僕の大学でも有名で、とにかく早い。ただ、K田先生の手術の前立ちをやっても、先生の主義の凄さは感じるのだが、何をやってるのだか全く分からない。天才の仕事とは正にこのことだろうと感じさせられる手術だった。
この病院では、研修医2年目と3年目を過ごさせてもらったが、今までの外科修行の中で最も充実した修行生活が送れた。この病院で出会った天才外科医と秀才外科医、僕の目指す外科医のカタチはどちらなのだろう?残念ながら、僕は天才的なセンスは手術に限らず全てにおいて持ち合わせていない。やはり地道な努力を重ねて秀才外科医を目指すべきだろう。この2人の外科医と会ってから早くも8年が経ってしまった。はっきり言って、この8年間、自分に成長があまり感じられない。歯を食いしばって修行に励もう。そういえば、先日歯医者さんから「歯が磨耗してるねぇ」と言われた。食いしばり過ぎたか?