修行の終わり

日本の仲間から先日メールがあった。日本で在籍していた医局の近況を報告してくれたメールだったが、後輩の一人がメスを置くらしい。ちょっと的からはずれたところのある男だったが、モチベーションの高いやつで、後輩の中では光っているはずのヤツだった。
丁度僕らの年齢というのは、自分の外科医としてのカタチを決めなければならない年頃なのだと思う。大学に残って安月給にあえぎながら一流を目指すか、最前線の大病院でバリバリ手術をこなすのか、それとも野に下って暇な病院の勤務医として平凡な生活を送るのか、メスを置いてしまうのか。僕の目指したいカタチは少なくとも後二者には無い。かといって前二者に入れるような才能は持ち合わせていそうに無い。ただ一つはっきりしてるのは、患者さんに「あの先生に手術してもらって良かったね」とか、同僚たちから「あいつならこの手術を任せても大丈夫だ」とか言ってもらえるような外科医になりたい。前出の後輩とは良くこんな話しをしながら飲み歩いていたので、彼がメスを置いてしまうというのは非常に残念だ。