実際の米国医師国家試験

先にも述べたが、USMLEは全部で4つの試験で構成されている。
Step 1は基礎医学のテストで、米国大学の医学生連中は在学中に受けることになっている。アメリカではマッチングというシステムがあり、評判の良い研修病院に採用されるには、このStep1の成績が良くないと、採用面接にもたどり着けずに足切りされてしまう。そんな訳で、この試験は皆必死だ。そんなことは露知らず、日本の医師国家試験の感覚で、ただ試験にパスすれば良いという感覚で臨んだ私は最初から面食らってしまった。

USMLEを受けてみようかと考え始めたのが2004年12月末で、実際参考書などを買い込んだのが年が明けた2005年1月も下旬に差し掛かってからだった。
噂に聞くところでは米国人学生どもはこの試験の準備を平均で3ヶ月ほどかけると言う。まがりなりにも、日本では第一線の臨床医として約10年のキャリアを持っていた私は、英語のハンデを差し引いても3ヶ月でStep1の準備を終えられると踏んでいた。当初の私のあまあまの計画では、Step1受験まで3ヶ月、Step2CKまでは2ヶ月、Step1CS準備は1ヶ月で合計半年でECFMG(外国医学校卒業者向けの米国医師免許)を取得し、恐らく米国人には不人気な移植外科フェローには、あっという間に採用され、2006年1月には留学先のノースカロライナ大学の移植外科で働き始められるものと信じていた。しかし、蓋を開けてみると、恐ろしく先の長い道が待っていた。

実際にStep1対策の参考書と問題集を買い込んだのが2005年1月20日頃だったと思う。とりあえず友達に薦められて買ったのが、First AID for USMLE Step1とKaplan Q bookの2冊、他に勉強会で使うPretestというシリーズのIntegrated Basic Science。早速、毎晩週末以外は寝ないつもりで問題集に取り掛かった。
まずは、もっとも面倒くさいと思われるAnatomyをかたずけてしまおうと思い、Q bookのanatomy編の100問に取り組むことにした。Q bookは全部で750問ぐらいのVolumeだったと思うが、50問をこなすのに毎晩3時間睡眠で取り組んで2週間もかかってしまった。もちろん昼間は研究のお仕事があったり、ゴルフや宴会、その他ESLクラスに出席したりしながらなので、全ての時間を机に向かっていたわけではないが、学生時代も本気で勉強していなかった自分が卒業後10年経って、しかも全てが英語の教科書と格闘しなければならないということを甘く見すぎていたのを痛感させられた2週間だった。