初肝移植

初肝移植と言っても、術者だったわけではないが、初めての肝移植は突然やって来た。
先週木曜日に、小児消化器科から原因不明の劇症肝炎のコンサルトを受けていたが、早速翌日にドナーが現れたと言う。ドナー肝の状態が良好である事を確認してから、手術は19時に始まった。過去に1回だけ移植を見学した事があったが、何しろ始めての手術の前立ちなので、思うように手が動かない。術者も最も若手のAttendingだっただけに、肝臓を取り出すのに8時間以上費やしてしまった。ドナー肝は非常に綺麗な肝臓だった。しかし、この肝臓の持ち主は、もうこの世にいない事を思うと、かなり神妙な気持ちになる。その肝臓を、患者のおなかに置いて、吻合の段階になってから長老格の日本人Attendingの先生に手術に加わってもらい、無事に手術を終えることが出来た。結局12時間もかかってしまった。しかし、潅流液で血の気の無いドナー肝に門脈を吻合した後、その肝臓に血の気が戻っていくのを見ると感動する。ドナーは亡くなってしまったが、その肝臓が外科医の手でもう一度生命を与えられたようだ。手術が終わって、感動のあまり、思わず術者のAttendingの先生と握手をしてしまった。
しかし、感動も束の間で、その後は地獄だった。徹夜で手術を終えると、翌日のルーチンワークが待っていた。結局、朝食も昼食も取らず雑用に追い回され、24時間絶食状態で仕事をする羽目になってしまった。さすがに帰宅途中に思わず運転しながら気を失いかけてしまった。
幸いな事に事故は起こさず、患者の状態もすこぶる順調だ。